BTK Killer続報

Andy2005-01-15

 前回とりあげた連続殺人犯BTK事件のその後の動き。
 CatchBTK.com主宰のTom Voigt氏は、1/14から数日間、現地Wichitaに乗り込んでBTKに呼びかけを行い、接触を試みているようです。行動力あるというか無謀というか…。
 一方、警察にBTKではないかと疑われて別件逮捕されたRoger Valadezという人物が、報道機関を相手取って訴訟を起こしたとのことです。その件に関するWichita Eagle紙の記事を以下に訳してみました。

 先月逮捕され、その後疑いの晴れたRoger Valadezが、警察とメディアがいかに彼の生活をめちゃくちゃにしたかを語る。

 Roger Valadezにとって12月1日は良いとはいえない日であった。64歳で、既に仕事を引退しウィチタに独りで住んでいるValadezはその日、身体が熱っぽかったため、ベッドで横になっていた。
 これ以上体調がひどくなるのかどうか彼にはわからなかった。そして自分の名前を守ることがいかにたいへんかについても。
 月曜、Valadezの弁護士は地方放送局三社に対し、Valadez逮捕後の取材におけるプライバシー侵害について訴えを起こした。月曜の本紙とのインタビューにおいて、Valadezはこれまで公にされていなかった自分の名前を公表することを望んだ。
 12月1日の最悪な状況について、彼は以下のように回想した。
 午後7時のことだった。外で人々が話す声が聞こえたかと思うと、彼の家のドアを激しくノックする音が続いた。
「気付く間もなく、彼らは家の中に入り込んでいた」と彼は言う。
 私服警官が彼の家のかんぬきをこじあけ、その奥にある木のドアも無理やり開けたのだ。
「銃を持った男たちが見えた。最初は制服を着ていなかったので、彼らが警察官だとはわからなかった。」
 リーダーらしき男が、数フィート向こうから拳銃を彼に向けていた。彼は言う。「それまで我が家で銃を突きつけられたことなどなかったんだ。」
 彼が記憶する最初の言葉はこんなものだった「手を頭の上にあげろ。お前を逮捕する。」
 一度ならず、警察官は”BTK”という言葉を口にした。それは1974年以来、ウィチタに出没し、警察の追求を逃れた謎の連続殺人犯の名前だった。
 警察は、彼のDNAを検査するための令状を示したが、彼は検体の提供を拒んだ。なぜ彼らがそんなものを欲しがるのかわからなかった。
「まあいいさ。いずれにしろあんたから採取することになるんだから。」と警察官の一人は言ったとValadezは証言する。
 二人の警察官がValadezの肩をつかんで椅子に押さえ込み、別の警察官が綿棒を使って口の中から検体を採取した。進んで検体を提供したわけではなかったが、抵抗は無益であるように思えた。
 彼は今も言う。「そんなことをする権利は彼らにないと感じたよ。」
 警察はこれまでBTK捜査の一環として、何百人もの男性からDNAサンプルを採取してきた。
「彼らはついに犯人を捕まえたと思ったんだろう。私がBTKであると確信していたよ。」と彼は述べる。
「警察は、私にしたと同じことを他の誰かにすることだってできるんだ。」
 警察は、BTK Hotlineにおけるフォローアップを行った後に、Valadezの名前を伏せたまま、驚くほど軽微な罪による彼の逮捕を発表した。彼らはValadez宅に押し入る前に長期間にわたって調査を行っていたのだ。
 Valadezの弁護士の一人、Craig Shultzは言う。「警察がどうして彼の家を捜索しようとしたのか、私たちには全くわかりません。」
 Valadezは今回の経験によって、BTK捜査のクオリティに疑念を持つことになった。彼は捜査官のことたちを「アマチュア並み」と言っている。
 警察本部長Norman Williamsは、月曜の夜、訴訟の可能性があるので今はコメントできないと述べた。
 しかし、Williamsは組織を擁護した。「家宅捜索をして証拠を集めないことには何もできない。我々は憲法の範囲内で仕事をするよう努力している。」  
 しかし、Valadezにとって、家宅捜索はおそろしく徹底的なものであった。
 彼によれば、かけがえのない家族の写真が踏みつけにされたという。錆色の椅子(「親父の椅子」と彼は呼んでいる)に置いてあったクッションや、彼の母親のものであったアンティークの灯油ランプは捜索の後、なくなってしまった。
 そして、壁にはフットボール大の穴が三つ開けられていた。
「彼らはなにかを探していたんだろう。そして何も残していかなかったよ。」
 捜索は彼が受けたダメージの一部にしか過ぎなかったと彼は言う。
 逮捕されたその夜、娘からの電話でBTK捜査との関連を知らされ、彼はほとんど24時間近く眠れない時間を監獄で過ごした。
 釈放されたとき、彼は弁護士Dan Monnatの事務所で、子供たちと涙の再会をしたが、事務所のTVで、何が起こっているのかを知った。彼の南ウィチタの家の前には多数の車が駐まり、人々は彼の家の写真を撮っていた。
 後に、自分の名前と住所が報道されていたことを彼は知る。フィラデルフィアに住む姪でさえも、彼が逮捕されたことをTVのニュースで知っていた。
 彼はある女性のTVインタビューを思い出すと言う。彼女はこんな風に述べていた。「こんな近くに住んでいるなんて思いもしなかったわ。殺人鬼が私たちの中にいたなんて。」
 彼の逮捕から三日後、警察は本紙にValadezがBTK捜査の対象から外れたと語った。
 月曜に、Valadezはメディア3社に対して、プライバシー侵害と名誉毀損を理由に訴えを起した。彼は、本紙に自分の名前を公開してほしい旨希望した。そうすれば汚名を晴らすことができるからと。
 見知らぬ人々の援助を感じていると彼は言う。「彼らは私や家族のために祈ってくれている。今回のことで私がひどい仕打ちをうけていることをわかっているんだ。」
 なぜ自分がBTKであると疑われたか、いまだに見当がつかないと彼は言う。年齢や軍隊経験、線路のそばに住んでいることなどが、警察とのやりとりの中でBTKが開かした特徴と一致していることはわかる。が「同じような人間はたくさんいるはずだよ。」
 長年、彼は製造・生産担当マネージャーとして働き、29年間、Coleman Co.に勤めた。
 離婚経験があり、3人の子供と3人の孫がいる。
 Schultz法律事務所から去るとき、Valadezは足をひきずっていた。関節炎だという。「最近のストレスでよけい痛むようになったんだ。」
 Shultzは依頼者が現在も居心地の悪い状態にいると言う。
「今も彼がBTKだと信じている人々がいるんですよ。」 
− Wichita Eagle 2005/01/11「BTK frenzy shook retiree」
  http://www.kansas.com/mld/kansas/news/local/10615507.htm

 うーむ。恐ろしいですね。彼もある意味、BTK事件の被害者なのでしょう。真犯人がつかまるまで、きっと色眼鏡で見続けられるのだろうし。