「劇画狂時代 −『ヤングコミック』の神話」(岡崎英生、飛鳥新社)ASIN:4870315203
「ヘイ・ブルドッグ」の書評を読んで興味を持ち、図書館で借りた本。
1967年に創刊された青年劇画誌「ヤングコミック」に編集者として関わった著者がその時代を回顧する。青年マンガ誌というものの黎明期の記録だ。
僕は1964年生まれなので「ヤングコミック」の最盛期を体験していないし、ここに登場する宮谷一彦、上村一夫、真崎守、安部慎一といったマンガ家のこともよく知らない。
「同棲時代」という作品で有名だった上村一夫という人の絵が子供心にとてもエロティックな印象を残したこと、宮谷一彦という人が、はっぴいえんど「風街ろまん」のイラストレーションを描いた人であるということ、くらいでしかない。安部慎一に至っては「消えたマンガ家」(ASIN:4872333608)で知ったくらいだ。
しかしそんな僕にも、著者が関わった激動期の青年コミック界の状況はとてもおもしろかった。泥臭くてぐつぐつと熱く、ぎらぎらしている。
ヤンコミの歴史に沿って様々なエピソードが語られるが、高信太郎が慧眼の持ち主で、劇画界の裏プロデューサー的存在だったという話*1にはちょっと驚いた。軽めのギャグマンガを描く人という認識しかなかったもんで…。
終わりの方には同誌でビートルズ特集をやった際('72年)に、学生だった渋谷陽一が資料収集や原稿執筆に協力してくれたという話も出てくる。これも個人的に記憶に残るエピソードでした。
欲を言えば、もう少し図版が多いと良かったのけれども。作品内容を文章だけで説明されてもイメージがつかみにくいところがあったので。まあそのへんは著作権とかの関係でいろいろと難しいんですかね。
で、あとがきを読んだら、この本を書くきっかけが赤田祐一氏の熱心なすすめによるもの、ということが書いてあってなんか妙に納得してしまった。さすがカウンターカルチャーおたく(←褒めている)だなあ。
ちなみに現在も「ヤングコミック」という名の雑誌はあるみたいだけど、昔日の面影はまったくありませんね。あたりまえか。
【関連サイト】
▼宮谷一彦 漫画の描き方(宮谷一彦公式サイト)
http://www.10daysbook.com/html/miyaya/top/top.html
▼宮谷一彦のマンガを読んだことがありますか(宮谷一彦ファンサイト)
http://homepage1.nifty.com/DORA/miyayaf.html
▼上村倶楽部(上村一夫公式サイト)
http://www24.big.or.jp/~kmclub/
▼真崎守作品レビュー(「漫画時代」より)
http://www.interq.or.jp/orange/flow/manji/review/masaki/masaki.html
▼コーシン倶楽部(高信太郎ファンサイト)
http://kopchan.at.infoseek.co.jp/
▼安部慎一作品集(「まんだらけ」より)
http://www.mandarake.co.jp/publish/abe/