加藤詩子「一条さゆりの真実」(新潮社 2001)ASIN:4104438014
大阪市西成区のあいりん地区(釜ヶ崎)で暮らす、”伝説のストリッパー”一条さゆりを取材したことをきっかけに、著者は彼女が亡くなるまでの2年間、密接なつながりをもつことになる。特に最後の1年間は半同居生活といってもよいほどであった。
一条さゆりは著者に自分の半生を赤裸々に語った。冷たかった実母と優しかった義母のこと、結婚生活の破綻、ストリッパーとしての生活、泣く泣く手放した息子のこと、愛したけれど別れなければならなかった男や、彼女から金をむしりとっていった男のこと。
カセットテープ160本分にもわたる身の上話を聞くことにより、著者は彼女との「絆」を感じるまでになる。
しかし一条さゆりの死後、彼女が語ったことの多くが嘘であったことを知り、著者は愕然とする。こんなに信頼し、大事に思っていたのになぜ本当のことを話してくれなかったのか。自分が見てきたことはなんだったのか。
悔しさと情けなさに一時は自暴自棄になる。しかしやがて著者は思い直す。再取材をすべきだ、と。その努力をしなければ真摯に彼女に向き合ったことにはならない、と。
そして、生前関わった人々をたんねんに取材することで、真実の一条さゆりの姿が見えてくる…。
2段組430ページという分量にわたって、これでもかこれでもかというほどに彼女の悲しく壮絶な人生が描き出されていく。めちゃくちゃヘヴィー。読んでるうちにつらくなって、やめようと思うがやめられない。ううう。
でもその底には、著者の一条さゆりに対する愛情が横たわっている。だから最後には泣けてしまうのだ。
【関連資料】
▼駒田信二「一条さゆりの性」(ビットウェイ・ブックス)
http://books.bitway.ne.jp/shop/mt-detail_B/trid-main/ccid-0101/cont_id-B0080056001.html
一条さゆりを一躍有名にした本。この本のおかげで彼女の人生は大きく変わってゆく。
▼「一条さゆり 濡れた欲情」ASIN:B00005LPA7
http://nikatu.site.ne.jp/HTML/newpage53.htm
彼女の出演映画。神代辰巳監督作品。公然猥褻罪で裁判中にこの映画に出たことにより、裁判官の心証をかなり悪くしたらしい。
▼小倉孝保「初代一条さゆり伝説」(新葉館出版)
http://shinyokan.ne.jp/syoten/hon/yo/86044_030.html
「真実」と同様、死後に出された本のようだ。
▼一条さゆり official site
http://member.nifty.ne.jp/hanare/ichijosayuri/contents.html
「二代目 一条さゆり」のオフィシャル・サイト。(6月末に閉鎖予定)
「真実」にも彼女は登場する。ただし批判対象として。