村上”ポンタ”秀一「自暴自伝」(文藝春秋、2003)ASIN:4163653104

Andy2004-04-18

 ほんとは「音楽中心日記」の方に書きたかったんだけど、更新できない状況なのでこちらに。
 日本が誇る超一流ドラマーの半生を、真保みゆきが聞き書きしてまとめたもの。
 人柄を彷彿とさせる豪快なエピソードが山のように出てくる。
 たとえばどんなのかというと…。
 ・19歳でバンドボーイになった頃、初めてドラムというものの存在を意識した。きっかけはジャズ喫茶でコルトレーンの「インプレッションズ」を聴いたことだった。
 ・ドラムをやろうと決めてからも一年半はスティックを持たず、ひたすらイメージトレーニングを繰り返していた。
 ・「赤い鳥」バックバンドのドラム募集オーディションで叩き、絶対自分で決まりだという確信があったので、演奏が終わったとき、まだ順番を待っている20人くらいの応募者に「はい、ご苦労さん。帰っていいですよ」と言ってしまった。
 ・結果、確信通り自分が合格者になるのだが、実際にドラムを叩きはじめてから1週間くらいしか経っていなかった。
 ・「赤い鳥」のレコーディングでロサンゼルスに行ったとき、泊まっていたモーテルのラウンジでセッションをしているミュージシャン達がいて、その中に際だってギターがうまい白人がいたので「おまえはなかなか見どころがある。精進すればいいギタリストになれるぞ」と言ってやった。その男はエリック・クラプトンだった。彼は仲間とともにデュアン・オールマン一周忌コンサートのリハをやっていたのである。
 ・セッション・ミュージシャンとして大忙しだった頃、キャンディーズの曲の録音に行って、本人達が来ないということを知って、ドラムを叩かずに帰ってしまった。
 ・スティーヴ・ガッドと仲良くなり、彼が多忙かつ酒と薬でベロベロで仕事のダブルブッキングをしてしまうので「偽ガッド」として代役でドラムを叩いていた。……
 いやもうほんとに面白い話ばかり。
 もちろん笑えるエピソードだけじゃなくて、含蓄の深い音楽論も端々に出てくる。特に、仙波清彦フュージョングループ「スクエア」のメンバー。歌舞伎の囃子方仙波流家元でもある。)と自分との奏法比較を通じた邦楽・洋楽論は興味深かった。
 それにしても音楽的許容量の広い人だなあ。マイルス・デイヴィスから歌謡曲までだもんね。ジャンル破壊者。
 というわけで音楽好きにはたまらない本。あっという間に読めちゃってもったいないくらいでした。