斎藤美奈子「文壇アイドル論」(岩波書店、2002)ASIN:4000246135
村上春樹に村上龍、吉本ばななに俵万智、みんな「文壇村」のアイドルだった− 書評・作家論からゴシップ記事に至るまで周辺の膨大な資料を渉猟し、「一人の物書き」をアイドルにつくりかえる時代の背景に果敢に切り込む。林真理子、上野千鶴子、立花隆、田中康夫ら、総勢八名の豪華キャスト。渾身の同時代論。(カバー折り返しの紹介文より)
あまたある村上春樹論の大部分は「ゲーム批評」であると断じ、俵万智は「Jポップ」ならぬ「Jポエム」、吉本ばななの源流にあるのは「コバルト文庫」であると論ずる。
続いて、”シンデレラ・ガール”林真理子の「負の特質」を分析したかと思えば、上野千鶴子が駆使する「下ネタ」を「抜群のセンスの悪さ」と一刀両断。ついでに「知の巨人」立花隆のウィークポイントをさぐってみたりもする。
このあたりまででもう既にくすくす笑いが出てたんだけど「村上龍には『人を少しバカにさせる力』と『おっちょこちょいパワー』が備わっている。」という分析に至りついに爆笑。ぶははは。なるほどー。
で、白眉は田中康夫論。彼を「八〇年代以降の都市風俗に取材した稀有な『記録文学』の書き手だった」と評価し、デビュー作「なんとなくクリスタル」における本文の「だである」調と、注釈の「ですます」調は、「ボケ」と「ツッコミ」による掛け合い漫才であり、その後、「ボケ」の方が小説作品に、「ツッコミ」の方がエッセイに分化していったと分析している。これには素直に感心してしまいました。
それにしても著者の性格の悪さがにじみでた文章にはほれぼれしますね。けっこうすらすら読めちゃうんだけど。
しかし斎藤美奈子って1956年生まれなのかあ。もっと若いかと思ってた。
【関連のない資料】
▼チェーンメール「斎藤美奈子」(「ユー・ガット・チェーンメール」より)
http://www.netlaputa.ne.jp/~sim/CHAINMAIL/saitominako.html
こんなのがあるらしい。意外と彼女にけなされた作家や批評家が流してたりして。